『修学旅行先でも学校に戻ってからも、私は◯◯◯から目が離せなくなった。私の初めての恋にはこんな風に、屈辱と憧れが混ざり込んでいた。一年近くの片思いの末、高二の夏に告白した。◯◯◯は迷いつつ了諾して、一ヶ月後、めんどくさそうに私をふった。』
『くちなし』第五回(2018年)高校生直木賞 受賞作品 |
◯◯◯は…?内緒である(もちろん)。あっ、でも、これは私自身のお話ではありません。(そのような色鮮やかでドラマティックな出来事は、私にはありませんでした。残念ながら…)
先日、第五回(2018年)高校生 直木賞 受賞作品『くちなし』(彩瀬まる)を読み終えた。
7篇の短編から構成されている本作。その短編の一話ずつは、日々の細切れの隙間時間だけでスッキリと読み進めることが出来た。長編作品を細切れの隙間時間で読み進める時のように、シーンや設定を都度思い出す必要も無く、ストーリーに没入出来たので効率的に(最短時間で)読了となった。
すべてが女性目線の短編。共通するのはさまざまな『愛』の形。それらは、10代の清々しくまっすぐで爽やかな恋愛ストーリーではない。ジェンダーの問題(オトコとオンナ)。結婚に出産に不倫。と少々複雑である。だからこそ、生々しく切なくもリアルだ。人の業や単純ではない愛(情)が描かれている。しかも、ファンタジーでラッピングされて抽象化されている。(ちょっとした謎解き似た難解さがあり、そこがまた面白い。)
果たして、本作を推した高校生(きっと女子高生)は、7篇の短編のうちどの作品の?どんな部分に心がひっかかったのであろうか?。(将来のことなので実際に彼ら彼女らがどうなるか?は判らないが)『結婚に出産に不倫』なんて、今の彼ら彼女らには未体験の世界であろうに?。難解な謎解きはどこまで出来ていたのであろうか?。と少々、不思議に思っていた。(まあ、我々の世代は、はぐま祭で「うわき〜、ウワキ〜、浮気〜」と無邪気に連呼していたみたいだけれど(^^))
P254〜 第五回(2018年)高校生 直木賞の特集記事 |
その記事の中にそれらの答えの断片を見つけることが出来たような気がする。今(〜2018年8月中旬迄)、書店や図書館に並んでいます。機会がございましたらご覧頂ければと思います。
P263からは作者である彩瀬まるさんのインタビューの掲載もありました。そこにある高校生へ向けたコメント「ひとりにしない」は、まさに!言い得ていてうまい表現。まったくそのとおりだと思いました。
SFと呼ぶのがふさわしいのか?ファンタジーと呼ぶのがふさわしいのか?少々迷いますが、それぞれの作品において当たり前のように繰り出される不思議な架空の設定。そんな中で『愛のスカート』は特殊な設定のない(本短編集の中では例外的な)作品でした。すんなりと理解できる、スーッと沁み込んでくるストーリーの設定。冒頭のくだりはその『愛のスカート』からのくだりであります。
(という訳で、あくまでも個人的な感想ですが…。7つの短編の中の私にとってのフェバリット作品は『愛のスカート』でした。未来に希望を抱ける結び。構成や読後の感覚も良かった。本作のおかげで他の短編へ散りばめられているメタファーやフィクションの振れ幅も正当に理解できるような気がしました。
確かに。『奇跡の一品っていうのはこんな風に生まれる』し『好きなものに、触らないまま関わる方法は、きっとたくさんある』んだって、つくづく、そう思います。忙しい日々の中で忘れかけていたことを思い出させてくれる作品。焼きそばをビールで流し込みたくなるような作品でした。)
(おまけ)
我々高38回生のメーリングリストに例年の『第92回(2018年)見中磐田南高校同窓会総会・懇親会のご案内@磐田』が発信されていました。ご参加頂けるかたは、古川さん(ex/36HR 野球部)へご連絡をお願いします。(更に余談ですが、磐田南高校のオフィシャルサイト内のPTAコーナーへ登場しています。)
■概要(第92回(2018年)見中磐田南高校同窓会総会・懇親会)
・日時 平成30年8月19日(日)
総会 13時
懇親会 14時30分
・場所 磐田グランドホテル
— BNN38_dosokai (@Bnn38D) 2018年6月9日
■関連記事
・高校生直木賞と磐南生関連の過去からの記事→こちら
https://bannan38.blogspot.jp/search/label/Naoki35
■関連サイト
・小説を愛する現役高校生から“高校生直木賞”受賞作家への手紙。(近藤さん 2016年春、卒業)→こちら
http://books.bunshun.jp/articles/-/1102?page=2
・高校生直木賞(オフィシャルサイト)
→こちら
http://koukouseinaoki.com/
・文藝春秋社による昨年(2017年)高校生直木賞のレポート
→こちら
http://bunshun.jp/articles/-/2568